設計書の書き方|読み手に伝わる構成と表現のコツ

設計書の書き方と伝わる表現のコツを解説する記事のアイキャッチ。赤ペンで見直している設計書と付箋が並ぶ机

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設計書を書いてみたものの、『読み返すと分かりにくい』『レビューで何度も直される』と悩んでいる方も多いはずです。

結論から言うと、設計書の書き方で大事なのは「決めたこと」「決めた理由」「まだ決めていないこと」を分けて書くことです。この3つが混ざると、読む人はどこまで信じていいのか分からなくなります。

この記事を読めば、読み手に伝わる設計書の構成と、言葉の選び方のコツが分かります。

目次

設計書の書き方の基本は「読み手を先に決める」

先に結論

設計書を書き始める前に、誰が何のために読むのかを決めておきましょう。読み手が決まれば、書く細かさや使う言葉が自然に決まります。

『とにかく全部書いておけば安心』と思いがちですよね。ただ、読み手を考えずに書いた設計書は、情報が多いのに肝心な所が見つからない文書になりやすいんです。

ソフトウェアの設計書は、読む人によって知りたいことが違います。編集部が整理すると、次のようになります。

読み手知りたいこと書き方の工夫
発注側の担当者自分たちの要望がどう形になるか専門用語に説明を添え、画面や表で見せる
プログラマー何をどう作ればいいか条件の分かれ目と、入力と出力をはっきり書く
テスト担当何を確かめればいいか正しい動きと、エラーの時の動きを両方書く
保守する人なぜこう作ったか決めた理由を残す

設計書の種類ごとの役割は設計書とは?システム開発の設計書の種類と役割で紹介しています。

設計書の作り方の流れ

設計書を作成する流れ
  1. 読み手と、読んだあとにしてほしいことを決める
  2. 社内の過去の設計書やテンプレートから目次を決める
  3. 表・図で見せる所と、文章で書く所を分ける
  4. 決めたこと・理由・決めていないことを分けて書く
  5. 読み手に近い人に一度読んでもらい、直す

文章を「決めたこと・理由・決めていないこと」で書き分ける

ここでの結論

設計書の文章は、「決めたこと」「理由」「決めていないこと」の3つに分けて書くと、読む人が迷わなくなります。特に「決めていないこと」を書いておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。

『決めていないことまで書くの?』と驚く方もいるかもしれません。実は、決まっていないことを書かずにおくと、読む人が勝手に想像して作ってしまうんです。

デジタル庁のDS-100(デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン)でも、要件定義書について、未確定な要件はリスク要因になり得ることに留意し、その旨を要件定義書で明らかにするとしています。設計書でも同じ考え方が役に立ちます。

設計書の文章を決めたこと・理由・決めていないことの3つで書き分ける書き方表の図解

3つの書き分け表

次の表は、編集部が社内の備品を貸し出すシステムを例に作った、架空の書き分け例です。

書き分け書く中身記入例
決めたこと実際にこう作る、という内容貸出の期間は、借りる日から返す日までとする
理由なぜそう決めたか、他の案を選ばなかった理由総務との打ち合わせで、日単位の管理で足りると決まったため
決めていないことまだ決まっていない所と、いつ誰が決めるか延長の申込を受け付けるかは未定。次回の打ち合わせで総務が決める

3つを同じ段落に混ぜてしまうと、『延長はできるの?できないの?』と読む人が迷います。見出しや表で分けておくと、どこが確かな話なのかが一目で分かります。

「理由」は保守する人への手紙

決めた理由は、作っている最中には当たり前すぎて書き忘れがちです。でも、数年後にシステムを直す人にとっては、いちばん知りたい情報なんです。

読み手に伝わる表現のコツ

ここでの結論

設計書では、「適切に」「十分に」「など」のように、人によって受け取り方が変わる言葉を避けましょう。数字や条件、具体的な動きで言いかえるのがコツです。

設計書の文章で、いちばん多い失敗があいまいな言葉です。書いた本人には意味が分かっていても、読む人には伝わらないことがよくあります。

規格の書き方を定めたJIS Z 8301:2019では、要求事項は客観的に確かめられるものだけを書き、「十分に強い」のような表現を使わないという考え方が示されています。設計書でも、そのまま参考になる考え方です。

あいまいな言葉の直し方

設計書のあいまいな言葉を、条件や具体的な動きに言いかえる直し方をまとめた図解
あいまいな書き方伝わる書き方
適切に処理する返す日が借りる日より前なら、入力エラーとして画面に戻す
十分に速く表示する検索ボタンを押してから一覧が出るまでの目標時間を、非機能の章で決めた値にそろえる
必要に応じて通知する承認された時と差し戻された時に、申込者へメールを送る
名前など名前、社員番号、所属

文末と言葉をそろえる

同じJIS Z 8301では、要求は「…しなければならない」「…する」「…とする」、推奨は「…することが望ましい」、許容は「…してもよい」のように、文末で意味を書き分けるとしています。設計書でも、文末の意味を決めておくと読み間違いが減ります。

表現の見直しチェック
  • 「適切に」「十分に」「など」「適宜」が残っていないか
  • 同じものを別の名前で呼んでいないか(申込と申請など)
  • 「〜の場合」に対して「それ以外の場合」も書いたか
  • 1文に条件を2つ以上入れていないか
  • 文末で、必須か推奨かが分かるか

設計書作成要領で約束をそろえる

チームで設計書を書くなら、書き方の約束を「設計書作成要領」のような文書にまとめておくのがおすすめです。用語の一覧、文末の使い分け、図の描き方、版の付け方などを決めておくと、人が変わっても書き方がぶれません。

書いたあとのチェックは設計書・仕様書のレビュー観点でくわしく紹介しています。

場面別の設計書の作り方

ここでの結論

プログラム、VBA、JSONでやり取りするAPI、業務委託での発注など、場面によって設計書で押さえる所が少しずつ違います。どの場面でも「決めたこと・理由・決めていないこと」の書き分けは共通です。

『自分の場面だと何を書けばいいの?』という方のために、よくある場面ごとのポイントを並べますね。

場面特に書いておきたいこと
プログラムの設計書入力と出力、処理の流れ、条件の分かれ目、エラーの扱い
VBAなど小さな業務ツール使う人、元になるファイル、ボタンを押した時の動き
JSONでやり取りするAPI項目の名前と型、必須かどうか、エラーの時の返し方
業務委託で設計を頼む・受ける作業の範囲、成果物、確かめ方

プログラムとVBAの設計書の書き方

プログラムの設計書では、処理の流れを条件の分かれ目ごとに書くのが基本です。VBAのような小さな業務ツールでも、『自分しか使わないから』と書かずにおくと、担当が変わった時に誰も直せなくなってしまいます。

小さなツールなら、1枚の表に「使う人」「元になるファイル」「ボタンごとの動き」「エラーの時の扱い」をまとめるだけでも役に立ちます。プログラムの設計書は詳細設計書とは?、VBAの仕様のまとめ方はExcel VBA・業務ツールの仕様書の書き方で紹介しています。

JSONの設計書の書き方

APIでやり取りするJSONのデータは、項目ごとに名前、型、必須かどうか、例の値を表にまとめると伝わりやすくなります。APIの設計を、OpenAPI Specificationという公開された書式で書く方法もあります。くわしくはAPI仕様書の書き方で紹介しています。

業務委託での設計書の作り方

業務委託で設計を頼む時や受ける時は、設計書に何をどこまで書くかを、契約の前にそろえておくことが大事です。IPAの共通フレーム2013のガイダンスでは、企画や要件定義の一部を発注する場合に「請負」か「準委任」かの区別をしておくのがよい、としています。

委託範囲と成果物の決め方は業務委託の仕様書の書き方でまとめています。

設計書の書き方でよくある相談

ここでの結論

よく読まれている相談は「データベースの設計書の書き方」「文章をすっきりさせるコツ」「ドキュメントづくりに時間がかかりすぎる」の3つです。どれも、書き分けと表の使い方で楽になります。

知恵袋に寄せられた相談の中から、閲覧の多いものを要約してお答えしますね。

相談1:データベースの設計書の書き方が分からない

『勤怠を管理するシステムを作ろうとしていて、データベースの設計書の書き方が分からない』という相談です。

データベースの設計書は、「表で書く部分」が中心です。テーブルごとに項目の名前、型、必須かどうか、説明を表にし、テーブル同士の関係は図で描くと分かりやすくなります。書き方はテーブル定義書・データベース設計書の書き方で紹介しています。

相談2:設計書の文章をすっきりさせたい

『設計書の文章が長くなりがちで、すっきりさせるコツを知りたい』という相談です。

いちばん効くのは、1文に1つのことだけを書くことです。条件が2つ以上あるなら、文章ではなく箇条書きや表に移してみてください。

「決めたこと」と「理由」を同じ文に入れないのもコツです。理由は別の行に分けると、本文がぐっと短くなります。

相談3:ドキュメントづくりに時間をかけすぎている気がする

『SEとして働き始めたら、ドキュメント作成ばかりで時間がかかる』という相談です。そう感じる気持ちも分かりますよね。

設計書は、読み手が迷わずに作業できれば役目を果たします。誰も読まない欄まで細かく埋めるより、読み手が聞きに来そうな所を先に書くほうが、結果として時間の節約になります。

よくある失敗

見た目を整えることに時間を使いすぎて、肝心の「決めていないこと」が書かれていないケースがあります。罫線や色より、中身の書き分けを先に仕上げましょう。

設計書の作成ツールと、書き方の学び方

ここでの結論

設計書の作成ツールは、表計算ソフト、文書作成ソフト、無料の作図ツールやテキストエディタで十分です。書き方は、本で考え方を学び、社内の良い設計書をまねるのが近道です。

『設計書を作成するツールは、フリーの物でも大丈夫?』と気になる方もいますよね。大丈夫です。大事なのはツールより、チームで同じ形式と約束をそろえることです。

ツールの選び方は仕様書の作成ツール、ひな形の使い分けは設計書のテンプレート・サンプルで紹介しています。

書き方の本や公的な資料で学ぶ

設計書の書き方の本は、ソフトウェア設計や要件定義の本の中に章として入っていることが多いです。公的な資料では、IPAの共通フレーム2013やユーザのための要件定義ガイド 第2版が、開発の流れや文書の考え方を知るのに役立ちます。

設計書を書く力は、要件定義や設計といった上流工程を任される職場で評価されやすい力です。今の担当工程から一歩進みたい方は、求人の仕事内容で「設計書の作成」がどう書かれているかを比べてみると、道が見えてきます。今の職場で書く機会を増やしていく道も、もちろんありです。

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よくある質問

設計書の書き方で、いちばん大事なことは何ですか?

「決めたこと」「決めた理由」「まだ決めていないこと」を分けて書くことです。この3つが混ざると、読む人がどこまで信じていいのか分からなくなります。

設計書の作り方は、何から始めればいいですか?

まず読み手を決め、社内の過去の設計書やテンプレートから目次を作ってみてください。そのうえで、表や図で見せる所と文章で書く所を分けると書きやすくなります。

設計書の作成ツールは、無料の物でも大丈夫ですか?

大丈夫です。表計算ソフトや文書作成ソフト、無料の作図ツールやテキストエディタで十分に作れます。チームで形式をそろえることのほうが大事です。

設計書の書き方を学べる本はありますか?

ソフトウェア設計や要件定義の本に、設計書の書き方が章として入っていることが多いです。あわせて、社内で評価の高い設計書を読んでまねるのがいちばんの近道です。

まとめ

この記事の要点
  • 書き始める前に、誰が何のために読むかを決める
  • 文章は「決めたこと」「理由」「決めていないこと」で書き分ける
  • 「適切に」「十分に」「など」は、数字や条件、具体的な動きで言いかえる
  • チームで書くなら、設計書作成要領で約束をそろえる
  • ツールは無料の物でも十分。形式と約束をそろえることが大事
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仕様書ドットコム 編集部

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