入札の仕様書の書き方|公務員・調達担当が押さえるポイント

入札の仕様書の書き方を公務員・調達担当向けに紹介する記事のアイキャッチ。執務室の机の仕様書と入札書類

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異動で調達の担当になり、初めて入札の仕様書を作ることに。『前の担当者の仕様書をまねて書いたけど、これで大丈夫?』と不安な公務員の方も多いはずです。

結論から言うと、入札の仕様書は「特定の製品に偏らない」「必要な性能を書く」「検査できる」の3つを満たしていれば、大きく外れることはありません。

この記事を読めば、物品購入や業務委託の仕様書の書き方と、作る時に確かめたい所が分かります。

目次

入札の仕様書とは?予定価格と検査のよりどころ

先に結論

入札の仕様書は、何を調達するかを入札に参加する事業者へ示す書類です。同時に、予定価格を決める根拠にもなり、納品を受け取る時の検査のよりどころにもなります。

『仕様書って、業者さんに中身を伝えるためのものでしょ?』と思いますよね。実は、それだけではないんです。国の会計のルールでも、仕様書は入札の前後で何度も出てきます。

ルール仕様書が出てくる場面
予算決算及び会計令 第79条予定価格は、仕様書・設計書などによって決める
予算決算及び会計令 第101条の4給付の検査は、契約書・仕様書・設計書などの関係書類に基づいて行う
地方自治法施行令 第167条の15 第2項自治体の検査も、契約書・仕様書・設計書などの関係書類に基づいて行う

つまり、仕様書があいまいだと、予定価格の根拠も、検査の物差しもぼやけてしまいます。ここが、入札の仕様書を丁寧に作りたい理由です。

仕様書そのものの意味は仕様書とは?意味と目的で、発注する側の書き方の基本は発注仕様書とは?で紹介しています。

入札の仕様書と、ほかの入札書類の関係

入札では、仕様書のほかにも公告や入札説明書、契約書の案などが並びます。それぞれの役目を一度押さえておくと、どこに何を書けばいいか迷わなくなります。

書類主な役目
入札公告入札をすることと、参加の条件を広く知らせる
入札説明書手続きの流れ、提出書類、質問の受け付けなどを説明する
仕様書何を、どんな条件で調達するかを示す
契約書の案落札した後に結ぶ約束の中身を示す

調達の仕様書で気をつける3つのこと

ここでの結論

調達の仕様書は、「特定の製品に偏らない」「必要な性能を書く」「検査できる」の3つで見直すのがおすすめです。どれか1つでも欠けると、参加できる事業者が狭まったり、受け取る時にもめたりします。

ここが大事なところです。3つの観点を表にまとめました。

調達の仕様書で気をつけることを、特定の製品に偏らない・必要な性能を書く・検査できるの3つに分けたチェック表の図解
観点確かめることよくあるつまずき
特定の製品に偏らない商標名や型番で指定していないか、指定するなら理由があるか前回買った製品のカタログをそのまま写している
必要な性能を書く使い道から、必要な性能・規格・数量を書いているか寸法や色まで細かく決めすぎて、選べる製品が一つしかない
検査できる納品の時に、何を見て合格とするかが決まっているか「十分な性能を有すること」のように確かめられない

特定の製品に偏らない

内閣官房に掲載されている「政府調達手続に関する運用指針」では、協定で商標などを特定して一般競争や指名競争に付すことを禁じている、と説明されています。必要に応じて、技術審査を伴う入札手続をとるなどの運用も求めています。

情報システムの調達では、総務省行政管理局の「情報システムに係る政府調達の基本指針」実務手引書(2007年7月1日)が参考になります。原則として特定の商標名などを使った要求要件を定めず、国際規格や日本工業規格などのオープンな標準に基づく記載を優先するとしています。

商標名を書く場合も、製品の指定は必要最小限にし、不必要に製品を特定しないこととされています。デジタル庁のDS-100でも、技術や製品を指定する時は、指定する合理的な理由を書くとしています。

『同じ製品を使い続けたいから、型番で書いたほうが楽なんだけど…』という気持ちも分かります。その場合は、なぜその製品でないといけないのかを書けるかどうか、一度立ち止まってみてください。

同等品の扱いを書いておく

製品名を挙げる時は、「又は同等品」と添え、同等かどうかをどう判断するかも書いておくと親切です。

海上自衛隊(横須賀地方総監部)の「同等品承認申請実施要領」では、同等品を「仕様、規格、図面又は試験条項が同一であるもの」などと定めています。申請の時には、同等品承認申請書やカタログ、機能・性能の比較表、品質保証書などを出してもらう形です。

必要な性能を書く

仕様書は、「どの製品か」ではなく「何ができればいいか」で書くのが基本です。日本規格協会のJIS Z 8301の資料では、できる限り性能で要求を書くという原則が紹介されています。

設計や形で指定するしかない時は、「…又はこれと同等以上の材料」のようにするのが望ましいとされています。

検査できる

同じ資料では、要求事項は客観的に確かめられるものだけを書き、「十分に強い」のような表現は使わないという原則も示されています。仕様書の一文ごとに、『これは納品の時に確かめられる?』と自分に聞いてみてください。

3つの観点のチェック表
  • 商標名や型番での指定は、理由を説明できるものだけか
  • 製品名を挙げた所に「又は同等品」と判断の仕方を書いたか
  • 使い道から必要な性能・規格・数量を書いたか
  • 寸法や色など、必要以上に細かい指定をしていないか
  • 一文ごとに、納品の時の確かめ方が決まっているか

物品購入の仕様書の書き方とテンプレート

ここでの結論

物品購入の仕様書は、件名・目的・数量・性能・納入の条件・検査・保証の順に書くと、抜けが出にくくなります。前回の仕様書をまねる時も、この順で中身を見直してみてください。

『物品の仕様書って、どんな項目を書けばいいの?』と迷いますよね。編集部で作った、物品購入の仕様書テンプレートの目次の例です。

見出し書く中身書き方のポイント
1. 件名何を買うか「○○の購入」と短く
2. 目的・使い道何のために、どこで使うか性能を決める根拠になる
3. 数量台数・個数予備の扱いも書く
4. 性能・規格必要な性能、適合する規格製品名でなく性能で書く
5. 納入の条件納入期限・場所・設置の有無搬入経路や時間帯の制約も書く
6. 検査何を見て合格とするか性能・数量・外観の確かめ方
7. 保証・保守不具合の時の対応期間や連絡の窓口
8. その他提出書類、問い合わせ先カタログや比較表の提出など

物品購入の仕様書の記入例

編集部で作った架空の記入例です。庁舎の会議室で使う、持ち運びできるプロジェクターを購入するケースです。

見出し記入例
目的・使い道会議室での資料の投影に使う。窓のある部屋でも投影できること
性能・規格会議室の壁に、参加者全員が読める大きさで投影できる明るさと解像度を備えること。具体的な数値は使う部屋に合わせて記載
納入の条件○月○日までに庁舎の指定場所へ納入。初回の動作の確かめに立ち会うこと
検査指定の会議室で投影し、性能の項目を満たすかを確かめる
保証不具合の時の連絡先と、対応までの流れを示すこと

『性能の数値は、どうやって決めればいいの?』と思いますよね。いきなり数値を決めず、まず使う部屋や使う人数など「使う場面」を書き出すと、必要な性能が見えてきます。

数値の目安が分からない時は、複数の事業者から資料をもらって、どの製品にもあてはまる範囲で書くのが一つの方法です。

前任者の仕様書を使う時の作り方

公務員の仕様書の作り方として、前任者の仕様書を下敷きにするのはよくある進め方です。ゼロから書くより早いですし、所属の機関の書き方にもそろいますよね。

ただ、そのまま使うと、前回の事情に合わせた指定が残ってしまいます。使える所と見直す所を分けておきましょう。

そのまま使いやすい所
  • 見出しの並びや書式
  • 納入場所や提出書類などの手続きの部分
  • 検査や保証の書き方の型
見直したい所
  • 製品名や型番、細かな寸法の指定
  • 数量や納入期限
  • 今は使わなくなった規格や機器の名前

入札の仕様書の作成から検査までの時間軸

仕様書は、入札の前だけでなく、落札した後の検査まで使われ続けます。時期ごとにやることを並べてみました。

時期仕様書でやること
予算を考える時使う場面と必要な性能を書き出し、仕様書の案を作成する
予定価格を決める時仕様書の中身にもとづいて積算する
入札公告の時仕様書を公開し、質問を受け付ける
質問への回答回答の内容を参加者全員に同じように伝える
契約の時最終の仕様書を契約の書類として扱う
納品・検査の時仕様書の項目に沿って、性能や数量を確かめる

『作って公開したら終わり』ではなく、検査の日まで手元に置いて使う書類だと考えておくと、書き方も自然と具体的になります。

物品購入の仕様書を作る流れ

物品購入の仕様書を作る流れ
  1. 使う場面と、困っていることを書き出す
  2. 必要な性能を、使う場面から決める
  3. テンプレートの見出しに沿って書く
  4. 3つの観点のチェック表で見直す
  5. 予定価格の積算と、仕様書の中身がかみ合っているか確かめる
  6. 入札の質問に答えた内容を、関係者に同じように伝える
物品購入の仕様書を、使う場面の書き出しから入札後の質問対応まで順に作る流れを示した図解
よくある失敗

前回の仕様書をそのまま使い、もう売られていない製品の型番が残っているケースです。参加できる事業者がいなくなったり、同等品の申請が相次いだりします。

国の大きな調達では、仕様書の案について意見を募る手続きもあります。「政府調達手続に関する運用指針」では、入札公告の予定日の少なくとも30日前に、官報で意見招請の公示をする手続きを定めています。

業務委託やシステム調達、自治体の標準仕様書

ここでの結論

業務委託やシステムの調達では、物品よりも書く項目が増えます。国の情報システムの調達ではデジタル庁のDS-100が、自治体の基幹業務システムでは国が定めた標準仕様書が土台になります。

『物品と業務委託で、仕様書の書き方は変わるの?』という方もいますよね。業務委託では、作業の中身や体制、成果物の扱いまで書く必要が出てきます。

システム調達の仕様書:DS-100の項目

デジタル庁のDS-100(デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン、2026年6月12日決定)では、調達ごとに調達仕様書を作るとしています。記載事項は原則として次のとおりです。

項目中身
調達案件の概要何を調達するか
調達単位、調達の方式等どの単位で、どの方式で調達するか
情報システムに求める要件要件定義書を満たすべき旨
作業の実施内容・体制・方法何を、だれが、どう進めるか
作業の実施に当たっての遵守事項守ってほしい決まり
成果物の取扱い知的財産権の帰属、契約不適合責任、検収など
入札参加資格・再委託参加の条件、再委託の扱い
その他特記事項・附属文書個別の条件、添付する資料

要件定義書や参考資料は、調達仕様書に添付するとされています。総合評価落札方式では、提案依頼書(RFP)を作り、提案の手続や評価基準なども書きます。

業務委託の仕様書のまとめ方は業務委託の仕様書の書き方で詳しく紹介しています。

自治体の基幹業務システムは標準仕様書がある

自治体の仕様書で、ここ数年大きく変わったのが基幹業務システムです。地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)で、対象の事務では、標準化基準に合ったシステムを使うことが自治体に義務付けられました。

対象は、住民基本台帳や個人住民税、国民健康保険など20業務です。それぞれの標準仕様書は、制度を所管する大臣が定めます。

標準仕様書と自治体の調達

標準化の対象業務では、自治体は国が定めた標準化基準に合ったシステム(標準準拠システム)を使うことになります。対象外の業務や、標準仕様書の外にある独自の要望の扱いは、所管省庁やデジタル庁の資料で確かめてください。

自治体システムの標準仕様書については、自治体システム標準化の標準仕様書とはで詳しく紹介しています。

自治体の工事の仕様書

工事の入札では、都道府県や市町村がそれぞれ共通仕様書を定めていることがあります。例えば福島県や鹿児島県は、土木工事の共通仕様書をPDFで公開しています。

自分の自治体の共通仕様書がどこにあるかは、都道府県・市町村の共通仕様書の探し方で紹介しています。

入札の仕様書でよくある相談

ここでの結論

相談で多いのは、「特定の製品しか入れない仕様書になっている」「同等品の申請をどう扱うか」「仕様書を満たさない製品が落札された」の3つです。どれも、性能で書き、確かめ方を決めておくことで防ぎやすくなります。

知恵袋などで読まれている相談を、要約して答えていきますね。

仕様書が特定のメーカーの製品に合わせて書かれている

『見積合わせの仕様書が、明らかに一社の製品の仕様になっていて、ほかの業者が外される。これは問題ないの?』という相談は、多く読まれています。

国の調達では、先ほどの運用指針や実務手引書のとおり、商標などを特定せず、不必要に製品を特定しない考え方が示されています。発注する側は、その製品でないといけない理由を説明できるかを見直し、性能での書き方や「又は同等品」の扱いを検討してみてください。

参加する側で納得がいかない時は、入札説明書にある質問の手続きで、指定の理由や同等品の扱いを問い合わせてみるのが近道です。

同等品の申請を出されると、発注側は困るのか

『同等品の申請を出したら、嫌がられる?』という質問もあります。

同等品の申請は、仕様書が「又は同等品」を認めているなら、そのための正式な手続きです。発注側は、申請書や性能の比較表をもとに、仕様書の性能を満たすかを淡々と確かめれば大丈夫です。

例えば、窓口ではこんなやり取りになります。

「この製品は、仕様書の性能の項目を満たしていますか?」
「はい。比較表の三行目に、仕様書の項目と並べて書いてあります」

仕様書を満たさない製品が落札された

『仕様書の内容を満たしていない製品が落札されたように見える』という相談も見られます。

仕様書の性能が、確かめられる書き方になっていたかを振り返ってみてください。あいまいな書き方だと、満たしているかどうかの判断が人によって分かれてしまいます。

物品の注文書や契約書に収入印紙はいるのか

『物品を注文する時も、請負と同じように注文書や請書に収入印紙が必要?』という質問も、とてもよく読まれています。

国税庁の説明では、課税文書に当たるかどうかは、文書の名前ではなく、書かれている内容で判断するとされています。請負に関する契約書は第2号文書に当たるなど、契約の種類や書き方で扱いが変わります。

仕様書を引用した契約書や注文書は、引用された中身も含めて判断されることがあります。個別の書類の扱いは、税務署や税理士に確かめてみてください。

仕様書の一文一文を「確かめられる言葉」で書く力は、公務員の調達の仕事だけでなく、システム開発の要件定義や社内SEの仕事でも生きる力です。ITの仕事に興味がある方は、どんな求人があるかを眺めてみるのも一つです。

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よくある質問

公務員が仕様書を書く時、まず何から始めればいいですか?

使う場面と、困っていることを書き出すところから始めてみてください。前回の仕様書は参考にしつつ、使う場面から必要な性能を決め直すと、偏りのない仕様書に近づきます。

入札の仕様書のテンプレートはありますか?

機関ごとに様式があることが多いので、まず所属の機関の様式を確かめてください。無い時は、件名・目的・数量・性能・納入の条件・検査・保証の順に見出しを作ると書きやすくなります。

仕様書に製品名を書いてはいけないのですか?

国の調達では、原則として特定の商標名などを使わず、製品の指定は必要最小限にする考え方が示されています。書く場合は「又は同等品」を添え、指定する理由と同等の判断の仕方も書いておきましょう。

入札の後に、仕様書の中身を変えられますか?

入札の条件そのものが変わるため、慎重な扱いが必要です。変えたい点が出た時は、所属の機関の契約担当や規程に沿って確かめてください。

自治体の標準仕様書は、どこで確かめられますか?

自治体の基幹業務システムの標準仕様書は、制度を所管する省庁が定めています。デジタル庁の標準仕様書のページや所管の省庁の資料を、対象の業務名から探してみてください。

まとめ

この記事の要点
  • 入札の仕様書は、予定価格の根拠と検査のよりどころにもなる
  • 特定の製品に偏らない・必要な性能を書く・検査できるの3つで見直す
  • 製品名を挙げる時は「又は同等品」と判断の仕方を書く
  • 物品購入は件名・目的・数量・性能・納入・検査・保証の順で書く
  • システム調達はDS-100、自治体の基幹業務は国の標準仕様書が土台になる
仕様書ドットコム

仕様書ドットコム 編集部

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