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外注先に仕事を頼むことになり、上司から『発注仕様書を作っておいて』と言われた。でも、何をどこまで書けばいいのか分からない、という方も多いはずです。
結論から言うと、発注仕様書は「何を」「どれだけ」「いつまでに」「どの品質で」「どう確かめる」の5つを、相手が読んで同じものを思い浮かべられるように書けば形になります。
この記事を読めば、発注仕様書とは何か、そして発注先に伝わる書き方のコツが分かります。
発注仕様書とは?発注書・見積書・RFPとの違い
発注仕様書とは、発注する側が「何を、どんな条件で作ってほしいか(やってほしいか)」をまとめた書類です。発注書が「頼みます」という意思表示なら、発注仕様書はその中身の説明書にあたります。
『発注書と発注仕様書って、同じものじゃないの?』と迷いますよね。名前は似ていますが、役目が違います。
| 書類 | 役目 | 主に書くこと |
|---|---|---|
| 発注仕様書 | 頼む中身を説明する | 目的・範囲・数量・納期・品質・検査の方法 |
| 発注書(注文書) | 頼むという意思を伝える | 品名・数量・金額・納期・支払い条件 |
| 見積書 | 受ける側が金額を示す | 作業や品目ごとの数量と金額 |
| RFP(提案依頼書) | 提案を募る | 頼みたいことと、提案してほしい内容・評価の仕方 |
発注仕様書を先に作っておくと、見積書や提案の中身が同じ前提でそろいます。発注書には「詳細は発注仕様書による」と書いて、仕様書を添えて渡す形がよく使われます。
RFPとの関係はRFP(提案依頼書)とは?要件定義書・仕様書との関係で詳しく紹介しています。仕様書そのものの意味は仕様書とは?意味と目的もあわせて読んでみてください。
「仕様書 発注」でよくある呼び方の違い
発注仕様書は、業界や会社によって呼び方が変わります。調達仕様書、購入仕様書、委託仕様書、納入仕様書などです。
『納入仕様書は、発注側と受注側のどっちが作るの?』という疑問もよく見かけます。実は会社ごとに使い方がまちまちで、発注側が求める条件を書いたものも、受注側が「この仕様で納めます」と示すものも、同じ名前で呼ばれることがあるんです。
迷った時は、「だれが、だれに約束する書類か」を一言確かめておくと行き違いが防げます。
発注仕様書は5つで書く
発注仕様書は「何を」「どれだけ」「いつまでに」「どの品質で」「どう確かめる」の5つで組み立てると、抜けが出にくくなります。とくに最後の「どう確かめる」は、書き忘れが多い所です。
ここが大事なところです。この5つがそろっていれば、相手は見積もりも段取りも立てられます。

| 5つの観点 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 何を | 目的、作る物・やってほしい作業、範囲 | 「社内研修用の動画を制作する。撮影と編集を含み、台本は発注側が用意」 |
| どれだけ | 数量、規模、回数 | 「動画は3本、1本あたりの長さの目安を記載」 |
| いつまでに | 納期、途中の確認日、納める場所 | 「初稿は○月○日、最終納品は○月○日、データで納める」 |
| どの品質で | 守ってほしい基準・形式・条件 | 「画面の解像度、字幕の有無、使ってよい素材の範囲」 |
| どう確かめる | 検査の方法、合格の基準、直しの回数 | 「発注側が視聴して確認、修正は2回まで」 |
何を:目的から書き始める
いきなり作業の中身から書くより、「なぜ頼むのか」を一文添えておくと、相手が気を利かせやすくなります。範囲の外になる作業も、「含まない」と書いておきましょう。
どれだけ:数で言える所は数で
「いくつか」「適量」のような言い方は、人によって受け取り方が違います。数量や回数、大きさは、数で書ける所は数で書いておきます。
いつまでに:途中の確認日も入れる
最終の納期だけでなく、途中で確認する日を入れておくと、ずれが小さいうちに気づけます。納める場所や、データで納めるなら形式も書いておきましょう。
どの品質で:あいまいな言葉を使わない
「きれいに」「丈夫な」「使いやすい」は、受け取り方がバラバラになりやすい言葉です。この後の「伝わる書き方のコツ」で、言い換え方を紹介しますね。
どう確かめる:検査の方法を先に決める
『検査なんて、出来上がってから見ればいいのでは?』と思いますよね。ただ、何を見て合格とするかを先に決めておかないと、受け取る時にもめやすいんです。
国の調達のルールでも、仕様書は検査のよりどころになります。予算決算及び会計令の第101条の4では、給付の完了を確かめる検査を「契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて」行うとしています。
- 目的と、作業の範囲・範囲外を書いたか
- 数量・回数・大きさを数で書いたか
- 納期と途中の確認日、納める場所と形式を書いたか
- 品質の基準を、確かめられる言葉で書いたか
- 検査の方法と、合格の基準・直しの回数を書いたか
発注先に伝わる書き方のコツ
伝わる発注仕様書のコツは、「確かめられる言葉で書く」「守ってほしいことと、できればお願いしたいことを分ける」「性能で書く」の3つです。JIS Z 8301の考え方が参考になります。
JIS Z 8301:2019は、日本産業規格(JIS)の規格票の書き方を定めた規格です。規格に準じる文書にも使えるとされていて、仕様書を書く時の手本になります。
日本規格協会の資料では、要求事項は客観的に確かめられるものだけを書き、「十分に強い」のような表現は使わないという原則が紹介されています。できる限り性能で書き、設計で指定する時は「又はこれと同等以上の材料」のようにするのが望ましい、という考え方も示されています。
あいまいな言葉の言い換え例
編集部で作った言い換えの例です。左のような書き方を見つけたら、右のように直してみてください。
| あいまいな書き方 | 伝わる書き方の例 |
|---|---|
| できるだけ早く納品 | ○月○日までに納品 |
| 丈夫な素材を使う | 指定の規格に適合する素材、又はこれと同等以上の素材を使う |
| 見やすいデザインにする | 見出しの文字の大きさ、色の数、参考にするデザインを指定 |
| 必要に応じて報告する | 毎週○曜日に進み具合をメールで報告する |
| 不具合がないこと | 発注側の確認項目をすべて満たすこと |
「しなければならない」と「望ましい」を分ける
JIS Z 8301では、要求は「…しなければならない」「…とする」、推奨は「…することが望ましい」、許容は「…してもよい」と、言い方を使い分けます。
発注仕様書でも、外せない条件と、できればお願いしたい条件を書き分けておくと、相手が優先順位を判断しやすくなります。
「〜等」「〜など一式」で範囲を広げすぎるケースです。受ける側は何が含まれるか分からず、見積もりに余裕を上乗せしたり、後で追加費用の話になったりしがちです。
工事・システム・ソフトウェアの発注仕様書で書き足すこと
発注仕様書の5つの観点は共通ですが、工事やシステムの発注では、業界の決まりに合わせて書き足す項目があります。公共の発注では、国の手引きや標準仕様書が土台になります。
頼む内容によって、書き足したい項目は少しずつ違います。主なものを表にまとめました。
| 発注の種類 | 書き足したい項目 | 土台になる資料の例 |
|---|---|---|
| 工事の発注仕様書 | 図面、使う材料、施工の条件、特記事項 | 公共建築工事標準仕様書、土木工事共通仕様書 |
| システムの発注仕様書 | 業務要件・機能要件・非機能要件、成果物の扱い | デジタル庁のDS-100、IPAの手引き |
| ソフトウェアの発注仕様書 | 作る機能、テストの範囲、納品物、知的財産権 | IPAの共通フレーム2013 |
| 物品の購入 | 性能、規格、数量、納入場所 | JIS、各機関の調達のルール |
工事の発注仕様書
公共工事では、標準仕様書と特記仕様書、図面などを組み合わせて設計図書とします。国土交通省の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の1.1.1では、設計図書に違いがある時の優先順位を定めています。順番は、質問回答書、現場説明書、特記仕様書、図面、標準仕様書です。
発注者が書くのは、標準仕様書と違う所や、この工事だけの条件を書く特記仕様書です。違いは特記仕様書とは?標準仕様書との違いと優先順位で紹介しています。
システム・ソフトウェアの発注仕様書
デジタル庁のDS-100(デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン)では、調達を行う時に調達仕様書を作るとしています。記載事項は原則として次のとおりです。
- 調達案件の概要、調達単位・調達の方式
- 情報システムに求める要件(要件定義書を満たすべき旨)
- 作業の実施内容、実施体制・方法、遵守事項
- 成果物の取扱い(知的財産権の帰属、契約不適合責任、検収など)
- 入札参加資格、再委託、その他特記事項、附属文書
民間の発注でも、この並びはそのまま使えます。IPAの共通フレーム2013のガイダンスでは、企画や要件定義の一部を外に頼む時に、「請負」か「準委任」かを区別しておくのがよいとしています。
IPAの「超上流から攻めるIT化の原理原則17ヶ条」には、「要件定義は発注者の責任である」という一条もあります。システムの発注仕様書は、発注側が中身に責任を持つ書類だと考えておきましょう。
ソフトウェアの発注仕様書を5つの観点で書いた例
編集部で作った架空の例です。社内の備品の貸し出しを管理する小さなWebシステムを、外部に作ってもらうケースを想定しています。
| 5つの観点 | 記入例 |
|---|---|
| 何を | 備品の貸し出しと返却を記録するWebシステムを作る。既存の台帳の取り込みを含み、スマートフォン向けの画面は含まない |
| どれだけ | 画面は一覧・貸し出し・返却・管理の4つ。利用者は社員のみ |
| いつまでに | 画面の案を○月○日、テスト版を○月○日、本番の公開を○月○日 |
| どの品質で | 社内のブラウザで動くこと。ログインは社内の決まりに合わせる。操作の記録を残す |
| どう確かめる | 発注側が用意した確認項目で受入テストを行い、すべて満たしたら検収とする |
『ここまで書くと、相手の提案の余地がなくなるのでは?』と心配になるかもしれません。その時は、画面の作りや使う技術は「提案を求める」と書いておけば大丈夫です。
決めたいのは結果と確かめ方で、作り方まで縛る必要はないんです。
外注先に作業を頼む時は、明示する事項も押さえる
会社から中小の事業者に製造や情報成果物の作成などを頼む時は、取適法(中小受託取引適正化法)の対象になることがあります。旧「下請法」が2026年1月1日施行の改正で名前を変えたものです。
取適法の第4条では、委託した時に、給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法などを書面か電磁的方法ではっきり示すよう求めています。公正取引委員会と中小企業庁のテキストでは、給付の内容として品目・品種・数量・規格・仕様などを、相手が見て理解できる程度に示す必要があると説明されています。
受託側の給付の内容、給付を受け取る期日と場所、検査をする場合は検査を終える期日、代金の額と支払期日などが並びます。発注仕様書の5つの観点と重なる所が多いので、仕様書と発注書をセットで見直すと漏れが減ります。対象になるかどうかは、会社の法務や公正取引委員会の資料で確かめてください。
業務委託の仕様書のまとめ方は業務委託の仕様書の書き方で、自治体の入札で使う仕様書は入札の仕様書の書き方で紹介しています。
発注仕様書のテンプレートと、社内の手引きの作り方
発注仕様書のテンプレートは、5つの観点を見出しにしたものを1つ作っておくと使い回せます。さらに、書き方のルールを「発注仕様書作成の手引き」として社内にまとめておくと、担当が変わっても質がそろいます。
『毎回ゼロから書くのは大変…』と感じますよね。編集部で作ったテンプレートの目次の例です。
| 見出し | 書く中身 |
|---|---|
| 1. 件名と目的 | 何のために頼むのか |
| 2. 業務の範囲 | 含む作業、含まない作業 |
| 3. 数量・規模 | 数、回数、大きさ |
| 4. 納期と納める場所 | 最終納期、途中の確認日、形式 |
| 5. 品質の条件 | 守ってほしい基準、使う規格 |
| 6. 検査と受け取り | 検査の方法、合格の基準、直しの回数 |
| 7. 成果物の扱い | 権利の帰属、秘密の扱い |
| 8. 変更の手続き | 仕様を変える時の連絡と合意の方法 |
| 9. 問い合わせ先 | 担当と連絡方法 |

- 目的と、頼みたい作業を箇条書きにする
- 5つの観点でテンプレートの各見出しを埋める
- あいまいな言葉を、確かめられる言葉に言い換える
- 社内で読み合わせて、範囲の抜けを確かめる
- 発注先に渡し、質問を受けて回答を仕様書に反映する
- 最終版を発注書や契約書に添えて保管する
社内向けの「発注仕様書作成の手引き」に入れたいこと
担当者ごとに書き方がバラバラだと、同じ会社なのに発注先から見ると読みにくくなります。社内の手引きには、次のようなルールを入れておくと便利です。
- テンプレートの置き場所と、版の付け方
- あいまいな言葉の言い換え一覧
- 「しなければならない」「望ましい」の使い分け
- 発注先からの質問と回答の残し方
- 仕様を変える時の承認の流れ
テンプレートの作り方全般は仕様書のテンプレートで、見積もりを比べるための仕様のそろえ方は見積仕様書とは?で紹介しています。
発注仕様書でよくある相談
相談で多いのは、「発注書と何が違うのか」「書いていない作業を頼まれたらどうするか」「だれが作るのか」の3つです。どれも、発注仕様書を「約束の中身」として扱うと答えが見えてきます。
知恵袋などで読まれている相談を、要約して答えていきますね。
発注仕様書と発注書の違いが分からない
『発注書があるのに、なぜ発注仕様書もいるの?』という質問は、学生の方からも寄せられています。
発注書は「この条件で頼みます」という意思を伝える書類で、品名や数量、金額が中心です。発注仕様書は、その品物や作業が「どんなものか」を説明する書類です。1枚の発注書に、詳しい仕様書を添えるイメージで考えるとすっきりします。
契約書や発注仕様書に書いていない作業を求められた
工事の現場などで、『当初の契約書や発注仕様書に書いていない作業を頼まれたけれど、受けるべき?』という相談も見られます。
まずは、仕様書と契約書のどこにも書かれていないことを確かめてみてください。そのうえで、追加の作業として扱うのか、金額や期間が変わるのかを話し合い、合意した内容を書面に残すのが基本です。
特記仕様書は発注者が作るのか
『特記仕様書は、発注者と受注者のどちらが作るの?』という質問もあります。公共工事では一般に、特記仕様書は設計図書の一部として発注者の側で用意されます。
受注者は、特記仕様書と標準仕様書などを読み合わせて工事を進めます。分からない所は、入札の段階なら質問書で、工事中なら監督職員に確かめましょう。
発注仕様書を書くことは、システム開発でいう要件定義そのものです。要件定義や設計書を書く経験は、上流工程を任される職場で評価されやすい力でもあります。今の仕事で経験を積むのも、一歩進んで求人の仕事内容を比べてみるのも、どちらも良い道です。
IT・Webエンジニアの転職(PR)
仕様書を書く経験を活かせる職場を探すなら、求人も比べてみる
要件定義や設計を任されるか、発注側か開発側か、扱うシステムや働き方は会社によって大きく違います。担当したい工程や条件から、IT・Webエンジニアの求人を比べてみてください。
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よくある質問
発注仕様書とは何ですか?
発注する側が、頼みたい物や作業の中身と条件をまとめた書類です。何を、どれだけ、いつまでに、どの品質で作ってほしいか、どう確かめるかを書きます。
発注仕様書はだれが作りますか?
基本は発注する側が作ります。専門的な内容は、発注先の意見を聞いて直していくこともありますが、中身に責任を持つのは発注側です。
発注仕様書のテンプレートはありますか?
決まった様式はありません。この記事の目次例のように、5つの観点を見出しにしたテンプレートを社内で1つ作っておくと使い回せます。
システムの発注仕様書と要件定義書は同じものですか?
重なる所はありますが、同じではありません。デジタル庁のDS-100では、要件定義書を作り、それを満たすべき旨を調達仕様書に書いて添付する形をとっています。
工事の発注仕様書は、どこまで自分で書けばいいですか?
公共工事では、標準仕様書に書かれている標準的な内容は書き写さず、この工事だけの条件や標準と違う所を特記仕様書に書くのが基本です。民間の小さな工事でも、図面に表せない材料や範囲、撤去の扱いを書いておくと見積もりがそろいます。
発注した後に仕様を変えたくなったら、どうすればいいですか?
発注先と話し合って合意し、変更の内容と日付を書面に残しましょう。すでに作り始めている物の扱いや、費用・納期の変わり方も、その時に決めておくと安心です。
まとめ
- 発注仕様書は、頼む物や作業の中身と条件を説明する書類
- 何を・どれだけ・いつまでに・どの品質で・どう確かめるの5つで書く
- あいまいな言葉は、確かめられる言葉に言い換える
- 工事は特記仕様書、システムは調達仕様書の項目を書き足す
- テンプレートと社内の手引きを作ると、担当が変わっても質がそろう





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