業務委託の仕様書の書き方|委託範囲と成果物の決め方

業務委託の仕様書の書き方を紹介する記事のアイキャッチ。机に広げた仕様書と付箋の貼られた書類

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業務委託の仕様書を任されたものの、『何をどこまで書けばいいのか分からない』と手が止まっていませんか。社内の前例が古かったり、そもそもひな形が無かったりすると困りますよね。

結論から言うと、業務委託の仕様書は「委託範囲」と「成果物」の2つがはっきり書けていれば、ほとんどのもめごとは防げます。

この記事を読めば、委託範囲を3列の表で書き出す方法と、清掃業務を例にしたテンプレートの使い方が分かります。

目次

業務委託の仕様書とは?契約書・発注書との違い

先に結論

業務委託の仕様書は、委託する仕事の中身を具体的に書いた文書です。契約書が「取引の約束ごと」を決めるのに対して、仕様書は「何をどこまで、どんな出来ばえでやるか」を決めます。

『契約書があれば、仕様書はいらないのでは?』と思う方も多いはずです。ただ、契約書には業務の名前と期間くらいしか書かれていないことがよくあります。

それだけだと、受ける側は「どこまでやれば終わりか」が分かりません。その穴を埋めるのが仕様書なんです。

仕様書そのものの意味は仕様書とは?意味と目的で詳しく紹介しています。

契約書・発注書・仕様書の役割の違い

3つの書類は、次のように役割を分けて考えると分かりやすいです。

書類主に決めること業務委託での例
契約書当事者、期間、代金、支払い、解約、損害賠償などの約束ごと業務委託契約書、基本契約書
発注書・注文書今回頼む仕事、数量、納期、代金月ごとの注文書と請書
仕様書仕事の範囲、やり方、出来ばえ、成果物、報告の仕方業務委託仕様書、業務内容説明書

契約書と仕様書の関係や、印紙の考え方は仕様書と契約書の違いでまとめています。

法律でも「仕事の中身」をはっきり示すことが求められる

取引の相手が中小の事業者の場合、取適法(中小受託取引適正化法)が関わることがあります。2026年1月1日施行の改正で、旧「下請法」がこの名前に変わりました。

取適法の第4条では、委託する側は発注した時に、給付の内容や代金の額、支払期日などを書面か電磁的方法で示すことになっています。役務を頼む場合は、提供される役務の内容や、提供を受ける期日・場所も示す事項に入っています。

公正取引委員会・中小企業庁のテキストでは、給付の内容は「中小受託事業者がその内容を見て理解でき」る程度に示すことが必要とされています。仕様書は、この「中身」を伝える役目を担うことが多い書類です。

自分の取引が対象になるかは確かめておく

取適法の対象になるかどうかは、取引の種類や会社の規模で決まります。社内の法務や、公正取引委員会の公開資料で確かめてみてください。

役所が委託する場合は「検査の物差し」にもなる

自治体が業務を委託する場合、地方自治法施行令第167条の15第2項で、検査は「契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類」に基づいて行うと定められています。

つまり役所の委託では、仕様書がそのまま「合格かどうか」を決める物差しになるんです。入札にかける委託の仕様書は入札の仕様書の書き方で詳しく紹介しています。

業務委託の仕様書に書く項目(テンプレート)

ここでの結論

業務委託の仕様書テンプレートは、「目的」「範囲」「やり方」「成果物」「報告」「変更の手続き」の6つの固まりで組むと、抜けが出にくくなります。

『ネットで業務仕様書のテンプレートを探したけど、項目が多すぎて選べない』という声もよく聞きます。実は、どんな業務でも骨組みはほぼ同じです。

まずは次の表を目次代わりにして、自分の業務に合わない行だけ消してみてください。

固まり書く項目書き方のヒント
目的業務の名前、委託する理由、期待する結果「何のために頼むのか」を1〜2文で
範囲対象の場所・システム・資料、やること、やらないこと後で紹介する3列の表で書く
やり方作業の手順、頻度、時間帯、使う道具や資材の負担発注側が決める所と、受ける側に任せる所を分ける
成果物納める物、形式、部数、納期、納める場所「何を受け取れば完了か」を名詞で書く
報告日報・月報の有無、報告の時期、連絡の窓口報告書の様式があれば別紙にする
変更の手続き仕様を変える時の相談先、書面での確認の仕方口頭の指示をどう扱うかも決めておく

最初に「目的」を書くと、細かい判断がぶれにくい

目的の欄は飛ばされがちですが、実はここが一番役に立ちます。仕様書に書き切れなかった場面で、受ける側が判断するよりどころになるからです。

例えば、こんな書き方です。

「来庁者が気持ちよく使えるよう、庁舎の共用部分を清潔に保つことを目的とする。」

この1文があるだけで、『書いていないけど、汚れていたら拭いておこう』という判断がしやすくなります。

やり方は「どこまで任せるか」を決めてから書く

作業の手順を細かく書くほど、受ける側の工夫の余地は減ります。逆に、出来ばえだけ書いて手順を任せる書き方もあります。

JIS Z 8301:2019(規格票の様式及び作成方法)の考え方でも、要求はできるだけ性能で書くことが原則とされています。業務委託でも「何をもって完了とするか」を先に決めると、手順を書きすぎずに済みます。

テンプレートを使う前のチェック
  • 業務の目的を1〜2文で書けるか確かめる
  • 対象の場所・資料・システムを一覧にする
  • 発注側が負担する物と、受ける側が用意する物を分ける
  • 成果物と納期を名詞で書けるか確かめる
  • 仕様を変える時の連絡先を決める
業務委託の仕様書を目的・範囲・やり方・成果物・報告・変更の手続きの6つの固まりで組む図解

委託範囲は「やること・やらないこと・相談先」の3列で書く

ここでの結論

委託範囲は、やることだけを並べるとすき間が残ります。「やらないこと」と「判断が要る時の相談先」を横に並べて書くと、境目がはっきりします。

業務委託でよくもめるのは、『それも含まれていると思っていた』というすれ違いですよね。原因の多くは、仕様書に「やること」しか書かれていないことなんです。

そこでおすすめなのが、範囲を3列の表で書く方法です。編集部では、この形を記入表として使っています。

作業のまとまりやることやらないこと判断が要る時の相談先
日常の作業決めた場所・頻度での作業決めた場所の外の作業発注側の担当者
臨時の作業事前に書面で頼まれた作業口頭だけで頼まれた作業発注側の担当者と、契約の窓口
物品や資材仕様書で受ける側の負担とした物の用意発注側の負担とした物の購入発注側の総務・調達の窓口
事故や故障見つけた時の連絡と、応急の対応設備の修理そのもの施設の管理者
個人情報・機密決めた範囲での取り扱い持ち出しや複製情報の管理責任者

「やらないこと」を書くのは冷たくない

『やらないことまで書くと、相手に失礼かな』と気にする方もいます。そう感じるのは自然です。

ただ、境目がはっきりしている方が、受ける側も安心して見積もりを出せます。「ここから先は別料金で相談」と言いやすくなるのも、お互いにとってよいことなんです。

相談先は「人の名前」ではなく「役割」で書く

相談先の欄は、担当者が異動しても使えるように、役割で書いておくのがコツです。

例えば「総務課の施設担当」「情報システムの管理責任者」のような書き方です。連絡先の一覧は別紙にして、変わった時はそこだけ差し替えるようにしておきましょう。

よくある失敗

「その他、発注者が必要と認める作業」のような一文で範囲を広げてしまう書き方があります。受ける側は見積もりのしようがなく、後で「それは含まれていない」ともめやすくなります。どうしても入れる時は、相談先と、追加の費用をどう決めるかを一緒に書いておきましょう。

業務委託の範囲をやること・やらないこと・判断が要る時の相談先の3列で書き出す記入表の図解

成果物と完了の決め方

ここでの結論

成果物は「受け取る物の名前」「形式」「納期」「確かめ方」の4つをセットで書きます。確かめ方が書けない成果物は、まだ決め方が足りていないサインです。

業務委託では、成果物が「報告書」なのか「作業をした状態」なのかで書き方が変わります。ここを分けて考えてみましょう。

業務の型成果物の例完了の確かめ方の例
物を納める業務調査報告書、デザインデータ、プログラム決めた項目がそろっているかを目次で確かめる
状態を保つ業務清掃、設備の点検、受付点検表や作業報告書と、現地の確認
回数で数える業務研修の実施、問い合わせ対応実施記録と件数の報告

「きれいに」「適切に」で終わらせない

JIS Z 8301:2019では、要求は客観的に確かめられるものだけを書き、「十分に強い」のような表現は使わないという考え方が示されています。業務委託の仕様書でも、この考え方はそのまま使えます。

例えば、こんなふうに言い換えてみてください。

あいまいな書き方確かめられる書き方の例
トイレをきれいに保つ便器・洗面台・床を作業後に目で見て汚れが無い状態にし、点検表に記録する
適切に報告する作業の翌営業日までに、作業報告書を担当者へメールで送る
速やかに対応する連絡を受けた時は、当日中に対応の予定を担当者へ伝える

文末の言い方で「義務」と「お願い」を分ける

JIS Z 8301:2019では、要求は「…しなければならない」「…する」、推奨は「…することが望ましい」、許容は「…してもよい」のように文末で分けています。

業務委託の仕様書でも、「〜する」と「〜することが望ましい」を混ぜないだけで、受ける側の迷いがぐっと減ります。

成果物を書いた後のチェック
  • 成果物の名前が名詞で書かれているか確かめる
  • 形式(紙・電子・部数)が書かれているか確かめる
  • 納期と納める場所が書かれているか確かめる
  • 完了の確かめ方が書かれているか確かめる
  • 「適切に」「きれいに」が残っていないか読み直す

清掃の仕様書の書き方とテンプレートの記入例

ここでの結論

清掃の仕様書は「場所」「作業」「頻度」「出来ばえの確かめ方」を1行ずつ表にするのが基本です。場所ごとに行を分けると、抜けも重なりも見つけやすくなります。

清掃の仕様書テンプレートを探している方は多いですよね。清掃は「状態を保つ業務」なので、成果物が目に見えにくい分、書き方の工夫が要ります。

ここでは、編集部が作った架空の記入例で見てみます。実在の施設の仕様書ではないので、自分の施設に合わせて行を足し引きしてみてください。

場所作業頻度出来ばえの確かめ方
玄関・ロビー床の掃き拭き、ガラス扉の拭き上げ毎日作業後に目で見て確認し、点検表に記録
事務室ごみの回収、床の掃除機がけ毎日ごみ箱が空か、床にごみが無いか
トイレ便器・洗面台・床の洗浄、消耗品の補充毎日汚れと消耗品の残りを点検表に記録
会議室机の拭き上げ、床の掃除機がけ使った日予約表と照らして実施を記録
窓ガラス(外側)拭き上げ季節ごと作業報告書に作業前後の写真を付ける

清掃の仕様書で書き漏れやすい所

清掃の仕様書で後から困りやすいのは、作業そのものより「周りの決めごと」です。次の項目は表とは別に書いておきましょう。

清掃の仕様書に足しておきたい項目
  • 作業する時間帯と、立ち入れない部屋
  • 洗剤や消耗品、道具をどちらが用意するか
  • ごみの分け方と、出す場所
  • 鍵の受け渡しと、紛失した時の連絡
  • 作業員が変わる時の連絡の仕方

国の施設の保全業務には共通仕様書がある

国の施設の保全業務には、国土交通省の官庁営繕が出している「建築保全業務共通仕様書」があります。2026年10月時点で確認できた版は令和5年版です。

国土交通省の説明では、施設管理者などが保全業務の委託契約を結ぶ時に、業務内容を明確にして保全水準を確保するための仕様書とされています。役所の委託で使う時は、国土交通省のサイトで最新の版を確かめてみてください。

清掃の書き方は「場所ごと」と「作業ごと」のどちらでもよい

建物が大きい時は、場所ごとに表を分けると読みやすくなります。作業の種類が少ない時は、作業ごとに場所を並べる書き方でも構いません。受ける側が見積もりを出しやすい方を選んでみてください。

よくある相談:口頭の指示・仕様の変更・注文書との関係

ここでの結論

仕様書に無いことを頼む時や、仕様を変える時は、書面で確かめ合うのが基本です。口頭だけで済ませると、費用や責任の扱いがあいまいになります。

業務委託の仕様書について、Q&Aサイトでもよく相談されている話題を3つ取り上げますね。質問はそのまま写さず、要点だけまとめています。

相談1:仕様書に無いことを口頭で頼まれた。やらないといけない?

受ける側からの相談で多いのが、『仕様書に書いていない作業を、口頭で頼まれた』というものです。断りにくいですよね。

結論から言うと、仕様書に無い作業は、まず契約の範囲に入るかどうかを確かめるのが先です。入らない作業なら、追加の依頼として内容と費用を書面でもらうよう相談してみてください。

例えば、こんな言い方なら角が立ちにくいです。

「承知しました。仕様書の範囲の外になるので、内容と費用をメールでいただけますか。」

発注する側も、口頭で頼みたくなった時点で「仕様書に足すべき作業だったかも」と気づけます。3列の表の「相談先」に、こうした依頼の窓口を書いておくと安心です。

相談2:業務の途中で仕様書を変えたい。契約も変えるべき?

『業務の量が増えたので仕様書を変えたい。契約書も作り直すの?』という相談もよく見かけます。

仕様の変更で代金や期間が変わるなら、契約の変更として書面で確かめ合うのが一般的です。代金も期間も変わらない細かな変更でも、変えた日と内容を記録に残しておきましょう。

経済産業省の繊維産業向けのガイドラインでも、発注していた仕様を途中で変える場合に、受ける側が既に作った分を受け取り、準備にかかった費用も負担することが望ましいとされています。業種は違っても、仕様を変える側が負担を考えるという点は参考になります。

相談3:注文書・請書には仕様書を付けるのが普通?

『業務委託の注文書と請書を作るけど、仕様書も一緒に綴じるの?』という相談もあります。

注文書に作業の中身が書き切れない時は、仕様書を別紙として付け、「別紙仕様書のとおり」と書く形がよく使われます。綴じて一体にするか、別にするかは会社の決まりに合わせて構いません。

ただし、印紙の扱いは書類の中身で判断されます。国税庁の説明では、他の文書を引用している文書は、その内容も記載されているものとして判断するとされています。迷った時は税務署や税理士に確かめてみてください。

「業務委託」と「委託業務」はどちらでも通じる

仕様書の題名を「業務委託仕様書」にするか「委託業務仕様書」にするかで迷う方もいます。どちらも使われていて、意味は通じます。社内や発注先の過去の書類に合わせておくと、読む人が迷いません。

業務委託の仕様書の書き方の手順

ここでの結論

業務委託の仕様書は、いきなりテンプレートに書き込むより、目的と範囲を先に決めてから埋めていく方が早く仕上がります。

『結局、どの順番で手を付ければいいの?』という方のために、書き方の流れを並べてみますね。

業務委託の仕様書ができるまで
  1. 業務の目的と、期待する結果を1〜2文で書く
  2. 対象の場所・資料・システムを一覧にする
  3. 3列の表で、やること・やらないこと・相談先を書き出す
  4. 成果物と納期、完了の確かめ方を決める
  5. 報告の仕方と、仕様を変える時の手続きを書く
  6. 受ける側の目線で読み直し、見積もりが出せるか確かめる

書いた後は「見積もりが出せるか」で読み直す

書き終えたら、受ける側の立場になって読み直してみてください。この仕様書だけで人数や時間、費用を見積もれるかどうかが、出来の目安になります。

見積もりが出せない所があれば、そこが書き足すべき所です。複数の会社に見積もりを頼む時の仕様のそろえ方は見積仕様書とは?で紹介しています。

発注の仕様書全体の考え方は発注仕様書の書き方でもまとめています。

仕様書をまとめる力はITの仕事でも生きる

業務委託の仕様書を書くと、関係者の要望を聞き取って、誰が読んでも同じに伝わる文書にする力が身につきます。この力は、システム開発の要件定義や社内SEの仕事とも共通するものです。

今の職場で発注の経験を積むのも、資格を取ってから動くのも、どちらも立派な道です。ITの仕事に興味がある方は、求人の仕事内容をのぞいてみると、自分の経験がどこで生きるか見えてきます。

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よくある質問

業務委託の仕様書と契約書は、両方必要ですか?

役割が違うので、両方そろえておくのが一般的です。契約書は代金や期間などの約束ごと、仕様書は仕事の範囲や出来ばえを決めます。小さな委託でも、範囲と成果物だけは書面にしておくと安心です。

業務委託の仕様書テンプレートは、そのまま使っても大丈夫ですか?

骨組みとして使うのは便利です。ただ、業務ごとに範囲や成果物は違うので、自分の業務に合わない行は消し、足りない行は足してから使ってみてください。

清掃の仕様書で、頻度はどこまで細かく書けばいいですか?

場所ごとに「毎日」「使った日」「季節ごと」のように、受ける側が見積もれる細かさで書くのが目安です。時間帯や立ち入れない部屋も一緒に書いておきましょう。

仕様書に書いていない作業を頼みたくなったら、どうすればいいですか?

口頭だけで頼まず、追加の作業として内容と費用を書面で相談するのが基本です。たびたび起きる作業なら、次の契約から仕様書に足しておきましょう。

業務委託の仕様書は、発注側と受ける側のどちらが作りますか?

一般的には頼む側が作ります。ただ、専門的な業務では受ける側に案を出してもらい、頼む側が確かめて仕上げる進め方もあります。

まとめ

この記事の要点
  • 業務委託の仕様書は「委託範囲」と「成果物」をはっきり書くのが要
  • 項目は目的・範囲・やり方・成果物・報告・変更の手続きの6つで組む
  • 委託範囲は、やること・やらないこと・相談先の3列で書く
  • 成果物は名前・形式・納期・確かめ方をセットで書く
  • 口頭の指示や仕様の変更は、書面で確かめ合う
仕様書ドットコム

仕様書ドットコム 編集部

仕様書の意味・種類・書き方から、システム開発の要件定義書・設計書・テスト仕様書、公共工事の標準仕様書・共通仕様書、住宅や発注の仕様書、仕様書を書く仕事のキャリアまでを、初めて仕様書に向き合う人が自分で判断できるように整理している情報サイトです。 公式サイト

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