建築の仕様書とは?図面との違いと建物で決めること

建築の仕様書とは何か、図面との違いと建物で決めることを紹介する記事のアイキャッチ。現場事務所の机の図面と仕様書

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建物の打合せや現場の仕事で『図面はあるのに、仕様書って何のためにあるの?』と感じたことはありませんか。どちらも建物の中身を決める書類なので、違いが分かりにくいですよね。

結論から言うと、建築の仕様書は「図面では表せないこと」を文章で約束する書類です。材料の種類や工事のやり方、仕上がりの程度を言葉で決めておく役目があります。

この記事を読めば、図面との違いと、建物で何を決めておけばいいかが分かります。

目次

建築の仕様書とは?図面との違い

先に結論

図面は「形と寸法と配置」を、仕様書は「材料・工事のやり方・仕上がりの程度」を受け持ちます。2つで1組になって、はじめて建物の中身が決まります。

建築の仕様書とは、建物に使う材料や工事の方法を文章で書いた書類のことです。「建築仕様書とは何か」を一言でまとめるなら、図面の足りない所を言葉でうめる書類なんです。

住宅金融支援機構は、住宅工事仕様書を「設計図面に表せない内容を文章で書き表したもの」と説明しています。建物の大小にかかわらず、この考え方は同じです。

同じ部分でも、図面と仕様書で書くことが違う

例えばこんな場面を考えてみてください。壁の断熱材を図面に書くと「グラスウール10K厚さ100mm」のように材料と厚みが入ります。

ところが「防湿材をどちら側に貼るか」は図面だけでは伝わりにくいんですよね。そこで仕様書に「防湿材を外壁の室内側に施工する」と文章で書いておきます。

工事図面に書くこと仕様書に書くこと
断熱工事壁の断熱材「グラスウール10K厚さ100mm」防湿材を外壁の室内側に施工する
内装工事「普通合板」留付けは150mm以内にくぎ打ちする
防水工事「アスファルトルーフィング」継ぎ目は上下方向100mm以上、左右200mm以上重ね合わせる

この表の例は、住宅金融支援機構が住宅工事仕様書の説明で挙げているものです。図面は「何を使うか」、仕様書は「どう施工するか」を受け持っているのがよく分かりますね。

建築の設計書と仕様書はどう違う?

『建築の設計書って、仕様書と同じもの?』と迷う方もいるはずです。建築の分野では、図面や仕様書をまとめて「設計図書」と呼ぶことが多いんです。

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版では、設計図書を「別冊の図面、標準仕様書、特記仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書」と定めています。仕様書は、この設計図書の一部という位置づけですね。

設計図書の全体像は設計図書とは?仕様書・図面・現場説明書の関係で詳しく紹介しています。

建築の仕様書は「標準」と「特記」の2段構え

ここが大事

建築の仕様書は、どの工事にも共通する「標準仕様書(共通仕様書)」と、その建物だけの決めごとを書く「特記仕様書」の2つで成り立っています。食い違った時は、特記仕様書のほうが優先されます。

建物を1棟建てるたびに、材料や工法をすべて一から書くのは大変ですよね。そこで、よく使う決めごとを1冊にまとめたのが標準仕様書です。

その建物だけで変えたいことや、標準仕様書に載っていない材料は、特記仕様書に書き足します。

「この外壁材、標準仕様書に載っていないんですが」
「それなら特記仕様書に、材料と施工方法を書き足しておきましょう」この2段構えを知っておくと、仕様書を読む時に迷いにくくなりますよ。

公共の建物で使われる標準仕様書

国の建物では、国土交通省の公共建築工事標準仕様書が使われます。2026年10月時点で確認できた版は令和7年版で、建築工事編・電気設備工事編・機械設備工事編の3編があります。

建築工事編は全23章です。1章の各章共通事項から始まり、仮設工事、土工事、鉄筋工事、コンクリート工事、防水工事、内装工事などが工事の種類ごとに並んでいます。

この標準仕様書は国土交通省のホームページでPDFが公開されています。中身と調べ方は公共建築工事標準仕様書(建築工事編)とはにまとめました。

建築工事の共通仕様書もある

「標準仕様書」と似た名前に「共通仕様書」があります。官庁営繕では、建築物解体工事共通仕様書や建築保全業務共通仕様書のように、建築工事に関わる共通仕様書もそろっています。

公共住宅では、公共住宅建設工事共通仕様書が使われます。名前は違っても、どの工事にも使う共通の決めごとを集めた書類という点は同じなんです。

食い違ったらどれが優先?

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)では、設計図書どうしで食い違いがあった時の順番も決まっています。上にあるものほど優先です。

優先順位書類
1質問回答書
2現場説明書
3特記仕様書
4別冊の図面
5標準仕様書

つまり、標準仕様書は「何も特に書かれていない時のよりどころ」です。個別の工事では、特記仕様書や監督職員の指示、契約図書で確かめるようにしておきましょう。

建物で決めることを「構造・外装・内装・設備」の4区分で見る

先に結論

建築の仕様書で決めることは、構造・外装・内装・設備の4つに分けると見落としが減ります。図面で形を決め、仕様書で材料と施工の決めごとを足していきます。

『仕様書に何を書けばいいのか、全体が見えない』という方も多いですよね。そこで編集部では、建物の部分を4つに分けて考える早見表を作りました。

区分主な部分仕様書で決めることの例図面で決めることの例
構造基礎、柱・梁、床、鉄筋・コンクリート材料の規格、継手や定着の方法、検査のやり方部材の位置と寸法
外装屋根、外壁、窓、防水防水材の重ね方、外壁材の留め方、仕上がりの程度屋根の形、窓の位置と大きさ
内装床・壁・天井の仕上げ、建具下地の組み方、ボードの留付け方、塗装の種類部屋の配置、仕上げ材の範囲
設備電気、給排水、空調、換気機器の性能、配管・配線の施工方法、試験機器や器具の位置、配管の経路
建物で決めることを構造・外装・内装・設備の4区分に分け、図面と仕様書の受け持ちを示した早見図

4区分で見ると、抜けている所が分かる

例えばリビングの床なら、図面で「床材の範囲」を決め、仕様書で「下地と仕上げ材の種類、留め方」を決めます。どちらか一方だけだと、現場で『これでいいんだっけ?』となりやすいんです。

「床は図面どおりフローリングで進めます」
「下地の合板は何を使って、どう留めますか?」

こんなやり取りが現場で出てくるのは、仕様書に下地と留め方が書かれていない時です。

公共建築工事標準仕様書の章立ても、この4区分に当てはめると読みやすくなります。鉄筋工事やコンクリート工事は構造、防水工事や屋根及びとい工事は外装、内装工事や塗装工事は内装、という具合ですね。

4区分で仕様書を見直す時のチェック
  • 構造で、材料の規格と検査のやり方が書かれているか確かめる
  • 外装で、防水や外壁の施工の決めごとがあるか確かめる
  • 内装で、部屋ごとに仕上げと下地が決まっているか確かめる
  • 設備で、機器の性能と試験のやり方が書かれているか確かめる
  • 標準仕様書と違うことは、特記として書き分けているか確かめる

建築の仕様書の書き方とテンプレートの考え方

先に結論

建築の仕様書は、ゼロから書くより「よりどころにする標準仕様書を決めて、違う所だけを特記する」書き方が基本です。テンプレートも、この形で作ると使い回しやすくなります。

『建築の仕様書のテンプレートを無料で探したい』という方もいますよね。ただ、拾ったひな形をそのまま使うと、その建物に合わない決めごとが残ってしまうことがあります。

大事なのは、ひな形の形よりも「何をよりどころにして、何を書き足すか」なんです。

書き方の手順

建築の仕様書を書く流れ
  1. よりどころにする標準仕様書(公共の建物なら公共建築工事標準仕様書など)を決める
  2. 構造・外装・内装・設備の4区分で、図面に書けない決めごとを洗い出す
  3. 標準仕様書と同じ所は「標準仕様書による」とし、違う所だけ特記する
  4. 材料の規格や性能は、名称と規格番号で書く
  5. 図面と食い違っていないか、読み合わせて確かめる

標準仕様書に載っていない材料や工法を使う時は、設計図書に特記するよう国土交通省も案内しています。「書いていないことは標準どおり」という前提で読まれるので、特記の書き漏れには気をつけたいところです。

設計事務所の机に広げた建物の図面と仕様書のバインダー、付箋を貼った書類

テンプレートの記入例(架空の例)

ここでは、編集部が作った架空の記入例を紹介します。小さな事務所の内装工事を想定しました。

区分項目記入例
共通よりどころ特記なき事項は、指定した標準仕様書の該当する章による
内装事務室の壁せっこうボード張りの上、塗装仕上げ。下地は軽量鉄骨下地
内装事務室の床タイルカーペット敷き。範囲は図面による
設備照明器具の位置は図面による。器具の性能は特記による
共通変更の扱い変更は書面で取り交わし、変更前の版と一緒に保管する
よくある失敗

「一式」「適宜」「同等品」とだけ書いて、何をもって良しとするかを決めていないケースです。見積もりや施工の段階で解釈が分かれる原因になるので、規格や性能、範囲で書いておきましょう。

書き方のコツをもっと知りたい方は、工事仕様書とは?書き方とテンプレートの使い方も参考にしてみてください。

建築の仕様書でよくある相談

先に結論

よくあるのは「監理指針はどこで見られる?」「公共建築工事標準仕様書とJASSの違いは?」「仕様書と設計書の違いは?」の3つです。どれも、誰が作った書類かを押さえると答えが見えてきます。

建築の仕様書について、よく寄せられる相談を内容をまとめた形で紹介します。

相談1:標準仕様書はPDFで見られるのに、監理指針は見られない?

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)は国土交通省のサイトからPDFで見られるのに、建築工事監理指針は見当たらない、という相談です。閲覧数がとても多く、同じことで困っている方が多いようです。

建築工事監理指針は、令和7年版が上巻・下巻の書籍として刊行されています。国土交通省大臣官房官庁営繕部の監修です。

標準仕様書そのものは国土交通省のPDFで確かめられるので、まずは本文を読み、細かい所は書籍や監督職員に確かめるという順番がおすすめですよ。

相談2:公共建築工事標準仕様書とJASSは何が違う?

『どちらも建築工事の標準仕様書なのに、何が違うの?』という相談も多いです。いちばんの違いは作っている所なんです。

比べる所公共建築工事標準仕様書JASS
作っている所国土交通省大臣官房官庁営繕部日本建築学会
位置づけ各府省庁の統一基準学会の標準仕様書
入手のしかた国土交通省のサイトでPDFを公開書籍として販売

公共建築工事標準仕様書の本文には、鉄骨の製作精度のようにJASSを引用している所もあります。違いの詳しい話はJASS(日本建築学会 建築工事標準仕様書)とはで紹介しています。

相談3:「仕様書」と「設計書」は、業種でも違う?

仕様書と設計書の違いは、業種によっても使い方が違うのでは、という相談です。その通りで、建築とシステム開発では言葉の使い方が少し違います。

建築では図面や仕様書をまとめて設計図書と呼び、システム開発では「何を作るか」を仕様書、「どう作るか」を設計書と呼び分けることが多いですね。ITでの違いは仕様書と設計書の違いで詳しく紹介しています。

仕様書を読む力は、ほかの仕事にも活きる

補足

建築の仕様書を読み解いて、関係者の要望を文書にまとめる力は、建物の仕事だけのものではありません。

図面と仕様書を突き合わせて食い違いを見つける作業は、システム開発の要件定義や設計のレビューとよく似ているんです。建設や設備の現場で培った経験は、IT側でも評価されることがあります。

今の現場で経験を積むのも、資格を取ってから動くのも、どちらも大事な道です。そのうえでITの仕事に興味がある方は、求人の仕事内容をのぞいてみると、自分の経験が活きる場所が見えてきますよ。

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よくある質問

建築の仕様書とは何ですか?

建物に使う材料や工事の方法、仕上がりの程度を文章で書いた書類です。図面では表せないことを言葉で約束する役目があり、図面と1組で使います。

建築の仕様書と図面はどちらが優先されますか?

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)では、特記仕様書が図面より優先され、図面は標準仕様書より優先されると定めています。民間の工事では、契約書でどの書類を優先するか確かめておきましょう。

建築の仕様書のテンプレートは無料で使えますか?

公共建築工事標準仕様書のように、国土交通省がPDFで公開しているものは無料で読めます。ただし、ひな形をそのまま使うのではなく、その建物で違う所を特記して使うのが基本です。

建築工事の共通仕様書と標準仕様書は違うものですか?

どちらも、どの工事にも共通する決めごとを集めた書類です。発注する機関や工事の種類によって呼び名が違い、個別の決めごとは特記仕様書に書きます。

まとめ

この記事の要点
  • 建築の仕様書は、図面では表せない材料や施工の決めごとを文章で書く書類
  • 図面は形と寸法、仕様書は材料・工事のやり方・仕上がりを受け持つ
  • 標準仕様書と特記仕様書の2段構えで、食い違ったら特記が優先
  • 構造・外装・内装・設備の4区分で見ると、決め忘れが減る
  • テンプレートは、よりどころを決めて違う所だけ特記する形で作る
仕様書ドットコム

仕様書ドットコム 編集部

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